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2010年08月11日

ドカンは土管ではない!

アニメや漫画などで空き地があると、
そこには必ず「ドカン」が置かれていました。

高度経済成長期、一生懸命下水道工事をしていた頃は、
毎日効率よく仕事に取り掛かれるように、
空き地に資材を一時的に置かせてもらっていたのだろうなあ、
なあんて想像することができます。

今は危険だから、そんな資材置き場はめったに見かけませんし、
なにより、空き地そのものがなくなりました。

なのに、現在のドラマ『ねこタクシー』でも、
主人公と出会ったノラネコの棲み家が「ドカン」でした。

8月10日のブログで紹介した「江戸東京たてもの園」でも、
数年前、「 ドラえもんとはらっぱ~土管はワンダーランドへの入り口~ 」
というイベントを開催していました。
ドカンは土管ではない!

「空き地にドカン」というのは、日本の(昭和の)原風景のようです。


さて、私がわざわざ「ドカン」とカタカナで書いたのには
理由があります。
これら空き地にあるのは、正確には「土管」ではないからです。

土管というのは製法としては屋根瓦と同じような焼き物で、
陶器の管、つまり「陶管(とうかん)」と呼ばれているパイプのことです。
「屋根瓦と同じ」と言うと、割れやすい感じがしますが、
現在では相当な地震でも割れにくいものが開発されています。
       これ ↓ は、ドイツ製のスグレものです。
ドカンは土管ではない!
それでも未だに、陶管は割れやすいというイメージを持つ方が、
下水道の仕事をしている人の中でも多いので、
「セラミックパイプ」という言い方もあります。
(この言い方だと、丈夫そうでしょう?)



ちなみにこれは、遺跡発掘中に見つかった土管です。
「『玉縁式』土管  平城京左京六条三坊十三坪出土」
と書かれています。
ドカンは土管ではない!

焼き物なので、腐りにくいのです。


では、昭和の空き地にあったパイプの正体は
いったいなんでしょうか。

それは、「ヒューム管」というのが正式な名称です。

遠心力によって、通常のコンクリートよりも高密度に仕上げる製法を
100年前、オーストラリアのヒューム兄弟が開発して
その名がつきました。

現在では、塩ビ製、ポリエチレン製、鋳鉄製などなど、
いろいろな大きさのいろいろなパイプが
下水道として使われています。

ドカンは土管ではない!
でも、高度経済成長期当時の技術力では、
子どもが中に入って遊ぶことができるような大きさのパイプは、
このヒューム管以外に考えられません。



見えないけど、この中には鉄筋が入っているんですよ。




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Posted by りんぼ at 23:47│Comments(7)下水道
この記事へのコメント
すごいっ!! 雑学としてメモしときたくなるような内容です♪♪
ドラえもんの「空き地にドカン」…あれ何だろうな??って、今の子どもたちは思ってますよね。私も子どもたちに、「自分の子どもの頃は、こういうのが置かれている空き地があったよ」って話したことあります。
Posted by 会夢 at 2010年08月12日 10:25
土管の正体はヒューム管(下水道関係者にはこの言葉が親しみがありますね)だということは、多くのかたに知っていただくとよいですね、同感。今の東京の下水道幹線の大半(おそらく全国的にも)は、つまりは、当時から昭和のおわりにかけて埋設された通称「土管」だと考えますが、りんぼさんのご存知のところで、割合はどのくらいでしょうか。
Posted by 都鳥 at 2010年08月12日 22:10
☆会夢さん
そっかー、いくらアニメなどでドカンが表現されていても、現在の子供たちの共通認識にはないのですね。
でも、実は私も実際には見た記憶がないのですよ、空き地にドカン。
「これからここに家が建ちそう」っていう空き地はいっぱいありましたけど。

☆都鳥さん
お問い合わせの割合は……。うーん、『下水道統計』を見ると正確な数字がわかると思うのですが、残念ながら手元にありません。
すでに埋設されているヒューム管の割合ということで考えると、都市部では思ったよりは少ないのでは? 都市部はシールドで施工したところも多いので、実際は5割強程度ではないかなあと思います。
「現場から、仕事が早く進むので塩ビ管を使わせてほしい、という声も上がってきたこともあった」なあんて話も聞いていますし。今度、調べておきますね。
Posted by 管理人 at 2010年08月14日 16:54
いえいえ、わざわざ調べていただかなくても。
そうですね、都市部の大きなものでは、シールドが中心でしょう。「ドカン」はちびまるこちゃん世代かつ郊外部の空き地(これも今は当時とちがって「なんとなく違和感なくどこにでもある」ではなくなって痛々しい雰囲気を漂わせるものになったような気がします)とわかちがたいものだと思います。もちろん私も、当時の家の付近の空き地のドカンのなかにすわるのが気に入っていました。
Posted by 都鳥 at 2010年08月23日 22:53
☆都鳥さん
ドカンの中に入ったことがあるんですか!
それは貴重な経験ですね。私なんて、見た記憶すら定かではないというのに。
白汚零さんの言う「胎内回帰」に近い居心地の良さ、だったのでしょうねー。
Posted by りんぼりんぼ at 2010年08月23日 23:35
☆都鳥さん
ドカン(ヒューム管)の割合の件、お尋ねの範囲と違うのですが、5年ぐらい前のアンケート結果が出てきました。それによると、
東京23区内でこれまでに建設した下水道管のうち、約61%がヒューム管でした。ですから、昭和の終り頃までとなると、もっと多いのでしょうね。
ちなみに、50年以上も使っている管のうち約68%がヒューム管で、その他は陶管だそうです。
Posted by りんぼりんぼ at 2010年08月26日 14:29
せまいところ、くぼんだ所、もともと好きなので、近くの空き地のドカンはほぼ秘密基地的に占有してました。って、うちがりんぼさんのところよりも田舎だったってことですが。
穴掘りも好きでしたね。庭に自分が入れるほどの穴を何か所も掘って、家族が何度か遭難した揚句に、禁止されちゃいましたけれど。
ヒューム管6割は、体感的にすごく納得です。たぶん私の幼少期が東京近郊の普及期にぴったり重なるはずなので(^^ゞ
Posted by 都鳥 at 2010年08月30日 22:48
 
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